西洋の人物にも触れてみたいと思います。
最初から“クセが強い”人ですけど。

フランス激動の時代に混乱の中を泳ぎ切った人です。
が、主義主張が全く見えない不気味な人。
自分の所属していたグループを次々と裏切り、最後を全うしました。

フーシェは船乗りの子として産まれますが、頭が良かったため、
教会に預けられ、やがて物理教師になります。
そこで、天才数学者で政治家でもあるカルノーや、やがて恐怖政治をひくロベスピエール等、
フランスを牽引していく人物との交流を持ちます。

特にロベスピエールとの交流は深く、妹と結婚の約束までしていました。

そしてフランス革命が勃発。

すると、教会出身でありながら腐敗した教会を批判する活動に身を投じます。(最初の転身)

これが認められ、議員に選出。
故郷のグループでもあり、多数派でもある穏健なジロンド派に加わります。

ところが、国王ルイ16世が亡命未遂を起こします。(ヴァレンヌ逃亡事件)
それまでは、決して国民の支持を失っていなかったルイ16世ですが、
これを機に批判が巻き起こり、処刑裁判が国会で行われます。

所属のジロンド派は処刑に反対しますが、フーシェは処刑賛成に投票。
ジロンド派からロベスピエールの居るジャコバン派に参加します。(二度目の転身)

ジャコバン派では、今までの穏健さなど見る影もなく過激な活動をします。
ジャコバン政治に反対したリヨンの後始末では3,000人を虐殺し
「リヨンの霰弾虐殺者」の通り名を与えられます。

ロベスピエールは潔癖な人物でした。
ほんの少しの不正も許せないような人でした。
その「きれいな政治」が行き過ぎだとの批判が強まると
虐殺を理由に粛清されることを恐れ、汚職をしていたバラスと組んで
クーデターを起こします。(三度目の転身)

クーデター成功後の時代、バラスの主導の下、汚職が横行しますが、
フーシェは汚職には手を染めず、バラスらとは距離を取り秘密警察を組織します。
この秘密警察がフーシェの権力を固めることになります。

やがてバラスの汚職政治は度を超すようになり、反乱が多発するようになります。
この反乱の鎮圧で頭角を現してきたのが来たのがナポレオンでした。

バラスは人気低下を食い止めるために王政復古を画策します。
が、人民の自由を切望する民衆に押されるナポレオンがクーデターを起こすと
フーシェは買収していたナポレオンの妻ジョゼフィーヌを通じ
自分を売り込み、ナポレオン政権でも警察大臣となります。(四度目の転身)

ナポレオン政権の下で権勢を振るいますが、ナポレオンが皇帝となり、
独裁が進み諸外国の攻撃が強まると、ナポレオンとも距離をとり辞職。
一旦、表舞台から姿を消します。(五度目の転身)

ところが、ナポレオンが失脚した後、島流しから復活すると
再びナポレオンを支持し警察大臣に就任します。(六度目の転身)

そして、ナポレオンがワーテルローで敗れると、ナポレオンを退位させ
臨時政府首班となります。(七度目の転身)

ナポレオンがとどめを刺されると、フランスは王政復古を目指します。
ルイ16世の処刑に賛成したフーシェは、ルイ16世の子供に恨まれていました。
フランスから追放されてしまいます。

しかし、秘密警察の情報を握り続けたフーシェです。
政敵はその情報収集能力を恐れ、命も財産にも手を出せません。
亡命後も公爵としての地位を最後まで確保して
晩年は教会への参拝も欠かさない穏やかな晩年を過ごしたそうです。

裏切りの連続。
主義主張を全く感じさせない行動。

ひょっとしたら、自らを権力者の「道具」として位置づけしていたのかも知れません。
そして初めて政権の首班として立った途端
責任を取らされて追放されたフーシェ。

どのような気持ちで動乱期を過ごしていたのか、とても興味があります。

ちなみに、日本警察の父と呼ばれる川路利良は
フーシェの作り上げた組織を参考に警察を作り上げたそうです。