前回、日本の奇人を紹介しましたので、今回は中国の奇人中の奇人を。

北宋時代の芸術家、米芾(べいふつ)。

この人は北宋四大家の一人として、書画の世界で一時代を築きました。
自ら書画を描くだけでなく、宮廷に召され官立美術学校の博士となり、
皇帝の芸術部門の鑑識官に任命されます。(芸術で国を滅ぼしたあの徽宗皇帝の、です)
史上最高の審美眼を持つものとされ、古人の模倣をさせれば超一流。
生半可な知識では見抜くこともできません。
書画・名石の収集にも努め、高禄で召し抱えられていましたが
すぐに美術品に変わり、常に貧しい暮らしをしていました。

・・・と書くと、清貧の求道者みたいにも思えますが、
かなりの人格破綻者でした。
いや、求道者ではあったんでしょうけど、貪欲で周囲に迷惑をかけまくり。

例えば、ある日。

とある人が持っている書を気に入った米芾は、それを買おうとします。
しかし、万金を積んでも譲ることはできないと断られると、
では、少し貸してくれ、と頼み込む。
そして、借りている間に模写をしてしまいます。

返す段になって、
「いや、ありがとう。おかげで模写もできたよ」と
真筆と模写を並べて見せます。
「まあ、さすがに違うけどね。どっちが真筆だかわかるだろ?」
米芾の完璧な模写。貸した人は判別がつきません。
わずかに見栄えの良い方を選びます。
「さすが審美眼があるねー」、とほめつつ、もう一つの書を丸めて持って帰る。
実は、そっちが真筆でした、というオチ。

例えばある日。

前エピソードのようなこともあり、
“米芾には貸すこともするな”“見せてる時も目を離すな”とのうわさが広がっています。
それでも、米芾に見て貰って、作品にハクを付けたい富者は多い。

そこで、持ち逃げできない船の上で
米芾に自慢の一品を見せる富豪がいました。
それは“書聖”王羲之の書。
唐の太宗李世民が愛し、コレクションを一緒に埋葬させたこともあり、
この時代既に真筆が少なくなっておりました。

米芾も当然、一目見て気に入ります。
何としても欲しい。でも買えない。借りることもできない。
盗んで逃げることもできない。そこで取った行動は。

すかさず、バっと奪い取り懐に収めると、
船の縁に走り寄り、
「この書が欲しい。くれ。くれなかったらともに死んでやる!」
とダダこねくりました。。。。

しかも、この相手というのが
水滸伝の敵役、蔡京の長男蔡攸だというから怖いもの知らず。
飛ぶ鳥を落とす勢いの一族です。

でも、この蔡攸、結構できた人のようで
「米芾に見せたのが間違いだった。。。」
と諦めて、米芾に書を譲ったのでした。

芸術を愛する北宋で、まさに芸術“だけ”を愛し生きた米芾。
徽宗の下、芸術に国力を費やした北宋は間もなく、金に攻められ滅ぼされます。

しかし、それを見る前に米芾は亡くなりました。
本人にとっては幸せな人生だったのでしょう。

。。。周囲は不幸に巻き込まれていたとは思いますが。