フランス革命の時代はキャラクターの宝庫です。
強烈な個性を持つ人物が綺羅星の如く輩出されました。

英雄ナポレオンや清廉さが行き過ぎて恐怖政治に至った
ロベスピエール等、理想の国を追い求めた人物も多いですが
そんな理想の国の姿を全く追い求めなかった人物もいます。

動乱の時代に5年も最高権力の座にありながら
今一つ知名度の低い、ポール=バラスという人物の話を。

バラスは没落していたとはいえ、子爵家の生まれ。
一応、ボンボンに部類される出自です。
とはいえ、跡継ぎでもない者に金はかけられず、
早々に軍隊に入ります。

貴族ですから能力は無くとも最初から士官として
インドの戦争に派遣されます。

しかし、才能はなかったようで、あっさり負けて捕虜に。
帰国することになります。

帰国しても特段の才能のないバラスはずっと鳴かず飛ばずでした。
ところがそこにフランス革命が勃発。
本来は貴族ですが、没落していたため
穏健派ではなく共和派のジャコバン派に参加します。

貴族でありながら、共和制に賛成するバラスは
特に何も目立った活躍はありませんが
それだけで派内の地位を上げることに成功します。
やがて国民公会の議員にまで出世します。

そして今度は軍歴をちらつかせ、
コネで従軍議員に就任。反乱鎮圧に向かいます。
そこで有能な部下のナポレオンを見出し、
彼に攻略を任せると、見事成功。

街を占領すると捕虜とした市民を処刑し、財産を没収。
私腹を肥やし始めます。

当時の政権首班は清廉潔白な恐怖政治家ロベスピエール。
この暴挙を聞きつけ、バラスはパリに呼び戻されます。

ここで事情通で自身も反対派の虐殺を行っていたフーシエが囁きます。
「裁判を受ければ確実にギロチンだ。やられる前にやれ。」

バラスは軍を率いて急襲。
ロベスピエールらを逮捕処刑する
テルミドールのクーデターを起こします。

邪魔者を消すと、バラスは銀行家や大商人と結託し
賄賂政治を始めます。

多くの浮名を流し(うち一人がナポレオンの妻となるジョゼフィーヌ)
愛妾公然とストリップをさせたとか色と金にまみれた日々でした。

当時の万能の天才、カルノーはバラスのことを
「マナーの良いカリギュラ」と表現しています。

政治環境を見てみると、諸外国との軋轢の中、経済は悪化し民衆は困窮。
にもかかわらず、バラス周辺の成金たちは
遊興に膨大な金や物をつぎ込みます。
ダンスホールだけでパリに650もあったと言われます。

民衆は次の選挙で自分たちの苦境を救ってくれる人たちに投票しようと
期待を持ち選挙を待ちました。

ところが、自分たちが選挙で勝て無さそうだとみたバラスたちは
次の選挙で自派の議員が多数派になるために
3分の2以上は今の議員でなければならないという法案を成立させます。

これに怒った市民による暴動が発生。
バラスは鎮圧軍司令官に任命されます。
・・・が、またもやナポレオンに丸投げ。
彼が鎮圧に成功します。

そして総裁政府が成立。
バラスは首班の一人に選ばれ、総裁政府が倒されるまで
首班であり続けます。

この政府では、憲法を改正。
これは普通選挙を廃止し、有権者を200万人減らし、
集会の自由を認めないものでした。

この時期、警察長官にはフーシエが付き、国民の動静を把握。
対外的にはカルノーが軍事的成功を修め
不満の渦巻く中、なんとかふらつきながらも保っています。

一方、バラスは相変わらずの奢侈な生活を送っていました。

国民の不満は溜まる一方。
ここでバラスは反対派の一掃を企てます。
フーシエやタレーランとともに
フリュクティドール18日のクーデターを起こし
反対派や良識派のカルノーなどを追放します。

そして、報道の自由の制限、間接税の復活、
革命教育、統計情報の整理等を行って
国民への締め付けを強めていきます。

国民と政府との乖離は決定的になり、
やがて機を得たナポレオンがクーデターを決行。
バラスたちは政府を追われました。

しかし、それまでに賄賂や横領などで
溜めた財産は膨大なもので、
その死まで悠々自適の生活を行っていたそうです。

このバラスは
「革命で最も私腹を肥やした男」
とも呼ばれています。

能力もないのに時流と有能な部下への丸投げで
長期に政権に居座り続けたバラス。
バラスが権力を握った時代は
どうも今の日本と重なる部分を多く感じます。